ウェブサイト制作においてクリエイターに求められる重要なスキルは、クライアントの要望を深く理解し、それを具体的な形にする能力です。これは、単にクライアントの指示通りに制作するだけでなく、事業全体の課題や目標を把握し、ウェブサイトで解決できる範囲を戦略的に提案することを含みます
クリエイターに求められるヒアリング能力
クライアントの要望を正確に把握し、質の高い成果物を生み出すためには、効果的なヒアリングが不可欠です。ヒアリングの主な目的は以下の3点です。
現状と問題の把握: クライアントの事業内容、抱えている課題、今後の目標などを包括的に理解します。これにより、ウェブサイトが事業目標にどのように貢献できるかを明確にします
要望の把握: ウェブサイトに必要な機能(例:問い合わせフォーム、ECサービス)や、ロゴ、企業カラーなどの具体的な要件を明確にします
認識の共有: クライアントが抱く抽象的なイメージ(例:「おしゃれなデザイン」)を具体的な表現に落とし込み、参考サイトなどを活用しながら、双方の認識を可視化します。これにより、手戻りを防ぎます
ヒアリングシートの活用
スムーズで漏れのないヒアリングを行うために、ヒアリングシートの作成と活用が非常に有効です
効率化と確認漏れ防止: 質問の順序を整理し、必要な情報を確実に聞き出すことができます
不要なやり取りの防止: 事前に多くの情報を得ることで、後からの追加確認や手戻りを減らし、クライアントの満足度向上にも繋がります
他の案件への活用と品質均一化: 一度作成したヒアリングシートは他の案件にも応用でき、チーム全体のヒアリング品質を向上させ、新人教育にも役立ちます
ヒアリングの進め方
効果的なヒアリングは以下のステップで進めます
1.ヒアリングシートの作成: ウェブサイト制作に必要な情報を網羅できるよう、質問項目を整理し、クライアントが回答しやすい形式で作成します
2.ヒアリングシートの事前送付: 事前にクライアントに送付することで、クライアントが情報を整理する時間を持て、当日のヒアリングをスムーズに進められます
3.ヒアリングの実施: 当日はアイスブレイクから始め、一方的な質問ではなく、相槌や深掘りを行いながら信頼関係を築きます。時間配分を意識し、質問の仕方にも配慮します
4.ヒアリング内容の整理・分析: ヒアリングで得た情報を整理し、制作チームと共有します。表面的な要望だけでなく、潜在的な課題や価値を探り、ウェブサイトの企画に活かします
ヒアリングシートに含めるべき項目
ヒアリングシートには、クライアントの基本情報からウェブサイトの具体的な要件まで、多岐にわたる項目を盛り込みます
基本情報: 会社名、担当者名、連絡先、決裁者、担当者のWebリテラシーなど
クライアントの事業について:
・事業内容: 特徴、強み、弱み、売上推移、顧客満足度など
・競合他社: 競合との違い、クライアントを選んだ理由など
・事業の目標: 短期・中期・長期の目標、具体的な数値目標など
・現在抱えている問題: 事業、ブランディング、採用など多岐にわたる悩み
・既存サイト・広報手段: 既存サイトの有無、パンフレット、SNSなどの広報ツール、アクセス解析データなど
ウェブサイトのコンセプトについて:
・ウェブサイトの目的: 制作動機、事業成果に繋げたい具体的な目的(企業広報、商品認知向上、販売、採用強化など)
・ウェブサイトに期待する効果: サービスの認知度向上、問い合わせ増加、会員登録増加など
・ターゲット層: 年齢、性別、居住地域、職業、役職、収入、家族構成、趣味など、具体的な人物像
ウェブサイトのコンテンツについて:
・掲載したいコンテンツ: 事業コンセプト、商品紹介、事例、採用情報、ブログなど
・ロゴ、ブランドカラー、素材提供の有無: ブランドガイドラインの確認
・指定フォントの有無: ブランドガイドラインの確認
・必要な機能: 問い合わせフォーム、ショッピングカート、ユーザー登録機能など
・撮影の有無: 画像・動画素材の必要性
・SNSとの連動: 連動させたいSNS、表示方法
・言語対応: 多言語対応の要否
ウェブサイトの仕様について:
・対応OS・ブラウザ・デバイス: ターゲット層に合わせた最適化
・ CMSの導入: コンテンツ管理の必要性(WordPressなど)
・ サーバー・ドメインの有無: 既存の有無と設定要件
・ セキュリティ対策: SSL証明書、スパム防止策、不正アクセス防止策など
・ 提供いただける資料について: 会社案内、パンフレット、カタログ、広告、求人票、商品・製品の現物・画像・説明書、顧客の声など
制作進行について:
・予算・希望価格: 制作業務の範囲、機能、リソースの計画
・希望公開日・スケジュール: スケジュール管理と調整
・主な連絡手段: メール、電話、オンラインチャットなど
運用・保守について:
・更新頻度: ウェブサイト公開後の更新計画
SEO対策: キーワード選定、メタタグ最適化など
・サポートの必要性: アクセス解析、バグ修正、機能追加、バックアップなど
ヒアリング時の注意事項
・クライアントに応じたヒアリング: クライアントのWebリテラシーに合わせて、質問の仕方や専門用語の使用に配慮します
・受け身にならない: クライアントの要望をただ聞くだけでなく、具体的な提案や選択肢を提示し、より良い方向へ導きます
これらのスキルと準備を徹底することで、クライアントとの間に良好な信頼関係を築き、効果的なウェブサイト制作を実現することができます


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